福岡市の博多の街中に唯一残っているのが、石蔵酒造の博多百年蔵。明治3年に建てられた白壁の土蔵にレンガの煙突は、今もなお健在だ。平成23年1月には国の登録有形文化財となり、博多の街にとってこの蔵の存在感は増すばかりだ。
「明治時代、福岡博多、具体的にいうと箱崎から姪浜界隈には、20~40の酒蔵があったと聞いています。戦後も十数軒はあったようです。現在、博多に残っているのは、私どもだけ。昔、人口の多い博多には比較的多くの酒蔵があったようですが、時代の流れの中で商売を変えていかれたんだと思います。20年ぐらい前まで、この蔵が残ることができたのは、いろいろな巡り合わせだと思うのですが、ここ20年ぐらいは、日本酒が非常に厳しい時代。たまたまこういう街中に酒蔵があったので、逆に酒蔵を活用しながら地域に根ざしたものにしていうこうと、日本酒とこの建物、2つの両輪をいかに残していくかを意識してきたつもりです。博多で日本酒を残していくのも一つの使命であり、併せてこの建物を残していくというのも使命。この建物を残すことで、あまり接点のない日本酒に触れてもらうことが、博多百年蔵の存在意義だと思っています」
「毎年、夏の時期しか休めないので、この夏に1カ月半ほど瓦を葺き替えて、3年がかりで約3か月半かけての葺き替え作業になります。十日恵比須神社や櫛田神社の改修工事などと手掛けている明治30年創業の安恒組さんにお願いしています。建物の維持のために、仕事をしているようなものですよ(笑)」は9号系。搾りにはやぶたを使いますが、お酒の味を見つつ極力自然圧を心がけています。香りは抑え気味。お米の味がしっかりとするお酒です。食事を楽しみながら味わえる食中酒として飲んでいただければと思います」。
- ◎蔵元情報
- 石蔵酒造株式会社
- 〒839-1404 福岡市博多区堅粕1丁目30-1
- TEL.092-651-19865